特別な時計の条件とは何だろうか?
多くの読者と同様に、時計を購入するための私の予算には限りがあります。私は時計が好きで、可能な限り多くのピースを手に入れたいと思っているので、パルミジャーニ・フルリエのトンダ PF GMT ラトラパンテのような時計が一体どのようにして私たちの購買意欲を刺激するのかを注意深く考えなければなりませんでした。
私にとっての最大の条件は一貫性です。部品それぞれが全体へとシームレスに溶け込んでいるか、それとも少しでも違和感のある部分があるだろうか?時計を裏返したときに、ムーブメントはダイヤル側と同じ品質を保っているか、またダイヤル側のビジュアルスタイルと一致しているだろうか。それとも両サイドはまったく異なる時計であるかのように見えるだろうか?約20年前に、私がはじめてパルミジャーニ・フルリエの時計を購入したときから、パルミジャーニの時計が統一されたビジョンの産物であることに敬服していました。そして、トンダ PF GMT ラトラパンテも例外ではなく、私の憧れの的です。
次に、機械的な魅力があるかどうか。世の中には、複雑機構を搭載している時計が数多くあります。しかし、シンプルな見た目の中に、クレバーで機能的なコンプリケーションが搭載された時計となると、何か特別なものを感じます。トンダ PF GMT ラトラパンテの場合、8時位置にさりげなく組み込まれているプッシャーを操作し、ロジウムプレートの時針をローカルタイムに進めると、その下にあるゴールドのホームタイム針が現れます。そして、リューズに一体化されたラトラパンテプッシュボタンで、ホームタイムとローカルタイムを再び合わせることができます。
GMT機能を発動させると、手首を見るたびに針のボリューム感とローズゴールドの目を引く色が視覚的なアクセントとなり、ホームエリアと現在地の時刻をひと目で確認することができます。ホームタイムとトラベルタイムの時針が同じ位置にあるステルスモードでも、着用者にはこの時計の追加機能についてのちょっとした秘密を知っているという満足感があります。また、この“スティール”ウォッチのローレット加工のベゼルが輝くプラチナで表現されていることを知っている人にとっては、ちらりと手元に視線を落とすときの秘密の喜びがさらに大きくなるでしょう。
見た目は素晴らしいのに、腕につけるとしっくりこない時計を持っていたことはあるでしょうか?私が初めて手にしたカルパ グランデから現在のトンダ PFシリーズにいたるまで、パルミジャーニ・フルリエのベルトはいつも着け心地が滑らかなのです。
そして、トンダ PFのデザインは、時計本体との一貫性を保った(またこの言葉ですが)一体型ブレスレットを組み込むと同時に、他のどんな時計も彷彿させない唯一無二の外観を提示するという難しい課題を達成しているように私の目には映ります。
ひとつの時計を選ぶのも至難の業でしょう。しかし、時間をかけてコレクションを築き上げ、進化させていくのは、まさに愛情を注ぐという労力が求められることであり、コレクター自身の個性を明らかにしていくことでもあります。時計、車、アート、ジュエリー、ハンドバッグやスニーカーなど、どんなコレクションであろうとそれは同じことで、テーマが明確にあっても、一見バラバラであろうと、一向に構わないのです。
あなたが所有する、美しく希少性の高い品々を思い浮かべたとき、そのコレクションをあなたにとって特別なものにしている要因や、そこにどんなパターンが存在するのか探究してみてください。私自身に当てはめて考えてみると、いくつかのテーマがあるように思います。
パトロネージ(芸術的支援):私はヴィンテージウォッチも所有していますが、私のコレクションは現役のアーティストや職人の作品に重きを置いています。小さなアトリエからミシェル・パルミジャーニなどのレジェンドに影響を受けた会社まで、特に独立したつくり手の作品が多くあります。
エッセンスとオーセンティシティ:これは少し説明するのが難しいですが、要は、つくり手の個性や情熱が直接反映され、ひと目でその個人やメーカーのものだとわかる作品を所有したいということ。もう少し表面的に解釈すると、あるメーカーの評価を確立した作品や、歴史的に重要な意味を持つことが約束された時計を所有するということです。そしてその逆は、友人らが持っているものとまったく同じものを所有することです。
根源的な価値観にもとづいた折衷主義:私が所有する時計は、マイルドな印象のものからワイルドな見た目のもの、また遊び心をくすぐられて購入したものや、独立系ブランドのもの、重要なブランドの礎を築いたモデルなどさまざまです。私のコレクションは明確なタイポロジー(類型学的な観点)に基づいたものではありませんが、もし私が適切な選択をしているのであれば、人々は私の個々の蒐集品を見て、それが愛好家としての私の性格にぴったり合っているものだと結論付けることができるはずです。さらに、私に運が向いているときには目の前にあるオプションから質の高いものだけを選び取ることができるという、審美眼の表れであると理解してくれるでしょう。
勇気と少しの謙虚さ: ここでは、私の好みの変化や他の愛好家との対話による心境の変化によって、これまでに手放してきた時計の長いリストを紹介するつもりはありません。私は多くの独立系ブランドやいくつかのメジャーブランドの時計に早くから手を出しており、コレクションの中には発売当初は注目されていなかったものの、後に脚光を浴びるようになったものもあります。とはいえ、もう私には合わないと決心がついたものについては、新しい家庭へ送り出すのもやぶさかではありませんでした。
恋に落ちる意欲:昔、地元のディーラーからパルミジャーニ・フルリエを紹介されたとき、私はこのブランドのことを知りませんでした。しかし、私はその時計に抗いがたい魅力を感じ、すぐにそれを手に入れ、身につけるようになりました。2018年のジュネーブ・オークションでも同様で、内覧会で初めてシリアル生産されたパーペチュアルカレンダー腕時計に偶然出会い、サイズが小さくヴィンテージマニアからの人気も限定的だったにもかかわらず、結局は購入して家に持ち帰りました。幸いなことに、そうした一目惚れしたものの多くは、長期的に私のコレクションにとどまっています。
人とのつながり:時計蒐集の良いところのひとつは、それが人とのつながりを生む趣味だということです。私は、新たな作品の情報を友人にシェアすること、そして彼ら、彼女たちの意見に耳をかたむけ、学ぶことが大好きです。
大きくなりつつある私のネイティブアメリカンのジュエリーコレクションについても、時計のコレクションと同様のパターンが見えます。アートや車、NFTのコレクションを始めたとしても、このパターンは変わらないでしょう¬¬。
あなたが愛してやまない品を探し出すこと、何を買わないか、また、新しいものを買うために何を売るかを決める難しい判断をすること、そしてたゆまぬ探求の末に築き上げたコレクションを通じて自分自身を理解することは、蒐集という行為を単に「モノを買う」以上のものにしてくれます。みなさんの蒐集の旅がゆたかで実りあるものになるよう、願っています。
ゲイリー・ゲッツ
時計コレクター
IG:garyg_1
キュレーター:AF